土地所有者と建物所有者の不動産共同売却によりローンを完済できた事例
Aさんは、両親と一緒に、親戚のBさん名義の土地(甲土地)に父親が建てた一軒家で暮らしてきました。その後、一軒家が老朽化してきたので、今度はAさんがローンを組んで、Aさん名義で家を建て替えました。Aさんと両親が甲土地を使う権原については、親戚同士のことで口約束しかなく、はっきりしない状況でした。
Aさんが家を建ててから数年後、父親は亡くなり、Aさんは病気で働けなくなりました。Aさんは、預金を取り崩してなんとかローンの支払いを続けましたが、預金も底を尽きかけ、近いうちにローンの支払いもできなくなってしまいそうな状況でした。
そんな中で、Aさんは、Bさんから、突然、Aさんの父親には土地を無償で貸していた(使用貸借)がAさんには貸していない、Aさんの父親が亡くなったことで使用貸借契約は終了したのだから建物を解体して甲土地を明け渡せ、などと請求されてしまいました。
Aさんは、亡父親から「地代は最初にまとめて払ってある」と聞いていましたが、Bさんは取り合ってくれず、ついには建物収去土地明渡請求の裁判手続きを起こされてしまいました。
Aさんは、ただでさえ多額の残ローンの返済に頭を悩ませていたところに、Bさんからこのような請求を受け、どうしてよいか分からず、弁護士に相談をしました。
弁護士は、まず、Aさんの土地利用権原を裏付ける資料の有無を調査しましたが、残念ながら土地賃貸借契約(有償契約)の存在を明確に裏付ける資料は残っていませんでした。
Aさんは、ローンを返せる見込みがないことから、売却はやむを得ないと考えていましたが、土地の利用権原がはっきりしなければ、売却することもできません。
そこで、弁護士は、BさんとAさんとで土地建物を共同売却する方針で、交渉することにしました。実はBさん側にも、今回の急な請求の背景には経済的に困っている事情があったようで、早期に好条件で売却可能な任意入札方式での売却に同意してもらうことができました。さらに、Aさんの取り分についても、Bさんとの交渉の結果、ローンの残額に引っ越し費用を加えた額を確保することができました。
なお、事前に調査していた不動産価格査定の結果によると、仮に使用貸借契約であったとした場合には、Aさん名義の建物の価値は、ローン残高の半分にも満たない金額になってしまうところで、Aさんは家を失った上に多額のローンを抱えて路頭に迷うところでした。
Aさんにとっては、とても良い条件で共同売却をし、ローンの負債をなくすことができたのです。
本件のポイント
親戚同士の約束などで、他人名義の土地に建物を建てて住んでいることもあると思いますが、その利用権原をはっきりさせておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
本件では、土地の利用権原に争いのあった事例でしたが、うまく共同売却を実現できたことにより円満解決をすることができました。