「特定妊婦」と、どう向き合うべきか?~もがれた翼パート21「ひとりぼっちの子守歌」から~
2014年8月23日(土)、北とぴあにて、東京弁護士会子どもの人権委員会主催の「子どもたちと弁護士が作るお芝居もがれた翼パート21『ひとりぼっちの子守歌』」が上演され、私も出演させていただきました。
「もがれた翼」シリーズは、1994年の子どもの権利条約の批准を機に、子どもに対する虐待やいじめ、少年非行などの人権侵害の実態と、子どもの人権をめぐる現代的課題を市民に広く知ってもらうことを目的に始まった演劇活動です。
東京弁護士会が行っている電話相談「子どもの人権110番」には、少年事件や、いじめ・体罰・退学などの学校問題、児童虐待などの数多くの相談が寄せられています。
「もがれた翼」シリーズは、こうした現実の事件を通して弁護士が出会った子どもたちの口から実際に出てくる言葉、苦しみを等身大で描き、このような子どもたちを前に、私たち大人には一体何ができるのだろうかという問いを投げかけ続けてきました。
私も、弁護士となった年の作品、もがれた翼パート12から、この活動に参加し続けています。
また、もがれた翼の上演活動の大きな特徴として、もがれた翼のお芝居の中で取り上げた取り組みが、現実の社会にも大きな影響を与えてきたことです。
その代表例として、もがれた翼パート9「こちら、カリヨン子どもセンター」において、夢の施設として描かれた子どものためのシェルターが短期間のうちに現実にも開設されました(注1)。
子どもの権利条約批准20周年を記念する2014年の「もがれた翼」は、若年などの理由から妊娠期からの継続的な支援を特に必要とする「特定妊婦」(注2)をテーマに取り上げました。
毎年、虐待により命を奪われる子どもは全国で100人前後にのぼっておりうち0歳児が全体の4~5割を占めています。
こうした虐待死を防ぐためにも、特定妊婦の成育歴や生きづらさに寄りそった支援の仕組み作りが必要であることを訴えました。
会場には、800人を超す参加者が詰めかけ、大成功に終わりました。
(弁護士佐藤香代)
注1:社会福祉法人カリヨンこどもセンター2004年6月に、子どものためのシェルターを開設しました。
注2:厚労省の養育支援訪問事業ガイドラインによれば、妊娠期からの支援を必要とする妊婦(特定妊婦)の指標として、若年、経済的問題、妊娠葛藤、母子健康手帳未発行・妊娠後期の妊娠届、妊婦健康診査未受診等、多胎、妊婦の心身の不調などが挙げられています。