法律相談所 たいとう

たいとうちゃん通信
お知らせ

離婚後の子どもの姓と戸籍の取り扱いについて

(質問)

私と夫との間には小学校5年生の娘がおり、この度、離婚することになりました。娘の親権者は、母親である私がなります。

しかし、名字のことで娘と揉めています。 私は旧姓に戻したいのですが、娘は反対です。私と娘が同じ戸籍に入るためには、どうしても同じ名字を名乗らないといけないと聞きました。一体どうしたらよいのでしょうか。

( 回答)

日本の制度上、戸籍は、1つの夫婦と氏を同じくする子どもごとに編製されます(戸籍法6条)。

1つの戸籍に入っていた夫婦が離婚をする場合、結婚をするときに氏を変更した者は、結婚中の戸籍からは除かれて、原則として結婚前の戸籍に戻ります。そのために、離婚によって旧姓に戻るということが起き、これを「復氏」と呼びます。(なお、婚姻前の戸籍に戻るのではなく、新戸籍を編製することを申し出ることもできます。)ただし、離婚する場合、必ず旧姓に戻さなければならないということではなく、離婚の日から3か月以内に届け出ることによって、婚姻中の氏を引き続き使用することもできます。これを「婚氏続称」と呼びます。婚氏続称をする場合、結婚前の戸籍にも戻れませんので、婚姻中の氏で全く新しい戸籍が編成されることになります。

さて、夫婦が離婚をした場合の子どもの戸籍の取り扱いはどうなるのでしょうか。

ご質問のケースでは、母親が親権者となるそうですが、親権者が旧姓に戻ったり新しい戸籍が編製されても、子どもの氏や戸籍には影響を与えません。そこで、何もしなければ、娘さんは父親の氏のままで、父親の戸籍に入り続けることになります。

そこで、離婚後に、婚姻中の戸籍から抜ける者(ご質問の場合、母親)が、子どもを自分と同じ戸籍に入れる場合には、家庭裁判所に子の氏の変更についての許可の審判を申し立て、許可を得る必要があります。 この申立ては、子どもが15歳未満の時は、法定代理人(ご質問のケースの場合、親権者である母親)が行い、15歳以上の場合には子ども本人が申し立てます。

ただし、ご質問では、子と母親が同じ戸籍に入りたいけれど、離婚後に名乗る氏について意見が一致していないとのことです。残念ながら、日本の法律では、「氏を同じくする子」でなければ同じ戸籍に入れませんので、子と母親が戸籍上別の名字のまま、同一の戸籍に入る方法はありません。

そこで、考えられる選択肢としては、

①母子がそれぞれ希望に沿った別の氏を名乗ることを優先して、子は父親の戸籍に残したままにする。

②同じ戸籍に入ることを優先して、

(ⅰ)母親が旧姓に戻ることをあきらめ、婚氏続称した上で、母親の氏への変更申立てを行う。

(ⅱ)娘さんを説得して、母親の旧姓に一緒に変更してもらう。

ということになります。

なお、第三の選択肢として、母親の職場や、子どもの通う学校の協力を得て、実生活上の場面では戸籍と異なる名字を名乗るということも考えられます。この場合には、どこまでの理解、協力が得られるかよく話し合い、調整する必要があります。