【寄稿】週刊教育資料、教育問題法律相談「教職員のSNSの利用について」
弁護士佐藤香代が、週刊教育資料No1326(20015年1月5・12日号)に寄稿しました。
「教職員のSNS利用についての留意点」
Q 昨今、教職員が生徒の様子について、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、「SNS」)である「Facebook」を通じて発信したことで、社会的な批判を呼んでいるケースが見受けられます。
しかし、SNSが普及する現状の中で、全面的に使用を禁止することは、現実的ではないように思います。教職員のSNSの利用については、どのように考えればよいのでしょうか。
A SNSとは、社会的な目的を持ったネットワークを、インターネット上で構築するサービスの総称で、その主たる目的は、人と人とのコミュニケーション・ツールとしての活用にあります。2004年ころから、急速に普及が進み、今や、強力な宣伝媒体として、企業のみならず、教育機関においても、積極的な活用が進んでいます。
他方で、SNSの利用には、従来からのインターネット上での情報発信に共通した法的な問題が内在しています。例えば、①特定の法人や個人に対する名誉棄損、誹謗中傷問題、②個人情報の漏えいによるプライヴァシー侵害、③著作権侵害などです。
そして、現在、特に普及が進んでいる「Facebook」は、現実に存在する人と人とをつなげることを目的としていることから、「実名登録制」となっていることに大きな特徴があります。そのために、ある教員が、「Facebook」上で問題のある発信をした場合、学校全体への不信につながり、その人の家族や職場に大きな影響を与える結果になります。また、Facebookに特徴的な機能として、ユーザーは、友人からの投稿や画面に表示される様々な広告表示に「いいね!」をすることができ、ユーザーがこれらの投稿や広告に「いいね!」をしたことは、自分の掲示板や友人のお知らせに連動して表示されます。要するに、誰がどんな投稿や広告に「いいね!」をしたかという事実が、友人登録をしているメンバーに知れ渡るということです。
こうした特徴を考えると、教職員がSNSを利用するにあたっては慎重な配慮・姿勢が求められることは間違いありません。
ただし、社会的に普及が進む中で全面禁止とすることは行き過ぎであり、かえって規則違反が後を絶たなくなる恐れがあります。むしろ、適切なSNSポリシーを策定し、告知と対話の中で、周知徹底を図っていくことが重要であると言えます。
具体的には、SNSの特徴・リスクを十分に解説した上で、法令順守・人権に配慮した投稿を心がけること、正確な事実を投稿すること、守秘義務・個人情報保護の徹底、パスワード等の流出防止、さらに、自身の所属を明らかにして投稿する場合、所属機関の代表的イメージとして受け止められる恐れがあることに十分留意すること、などが考えられます。