法律相談所 たいとう

解決事例
子ども・障がい者・高齢者

離婚時に調停で取り決めた養育費を減額した事例

相談内容

 A男さんは、妻のB子さんと2人の子ども(CさんとDさん)といっしょに暮していましたが、10年前にB子さんと離婚調停をして離婚しました。調停では、B子さんが親権者となって子どもたちを育てていくこと、CさんとDさんがそれぞれ22歳になるまで一人当たり月5万円の養育費を支払うことを取り決めました。

 離婚後、A男さんは調停で取り決めたとおり、毎月欠かさずにCさんとDさんの養育費として月10万円をB子さんに振り込んでいました。

 Cさんは高校卒業後に就職し、独立していましたが、調停条項では「22歳の3月まで」となっているので、A男さんは養育費の支払いを続けていました。

 A男さんは2年前に別の女性と再婚していますが、その女性との間に子どもが生まれ、新しい家族の生活も支えなければならず、月10万円の養育費の支払いが経済的に厳しくなったため、弁護士に相談しました。

受任結果

 弁護士は、A男さんの代理人として、B子さんに対する養育費減額請求調停を家庭裁判所に申し立てました。

 調停の中で弁護士は、①離婚調停では、CさんとDさんが4年制の大学に進学することを前提として「22歳の3月まで」と取り決めていたけれども、Cさんは経済的・社会的に自立していて、すでに養育費の対象となる「未成熟子」ではないこと、②A男さんは、現在は妻と子がいて、養育費を取り決めたときと比べて扶養家族が増えていることを主張しました。

 これらの主張を踏まえ、家庭裁判所の裁判官・調停委員がB子さんを説得してくれて、①Cさんについては養育費の支払義務がないことを確認し、②Dさんについては、A男さんの扶養家族が2名であることを前提に、現在のA男さんとB子さんの収入金額に基づいて養育費を算定し直し、その金額に減額する内容の調停が成立しました。

本件のポイント

 一度取り決めた養育費は、取り決めた当時から「事情変更」があった場合に金額の変更が認められます。

 本件では、まず、①Cさんが「未成熟子」ではなくなったという事情変更がありました。養育費の対象となるのは、経済的・社会的に自立していない子ども、すなわち「未成熟子」です。現在の民法では、18歳になると成人として扱われますが、18歳以上であっても学生などであって自立していない場合には、養育費の対象となる「未成熟子」と扱われます。

 また、一般的に、養育費の金額は、父母双方の収入、それぞれが扶養している人数とその年齢などに基づいて算定されますが、②Dさんについても、A男さん(養育費を支払う側)の扶養家族が増えたという事情変更を理由に、養育費の金額を算定し直しています。病気休職や転職などによる収入の減少も、事情変更の一つとなり得ます。

 特に、調停や公正証書で養育費を取り決めた場合には、不払いがあると給料の差押え等の強制執行のリスクがありますので、きちんと減額の手続きを取ることが重要です。

 なお、養育費の支払いを受ける側からも、収入の減少や子どもにかかる費用の増加等の事情変更を理由として、養育費増額請求が認められる場合があります。